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遺言書一覧

韓国にいる(と思われる)相続人探し。1年がかりで取り組んだ日本人相続人からの依頼の解決事例。~その5(最終回)~

韓国人女性弁護士のスピーディーでフットワークの軽い仕事により、韓国にいる相続人のうち1名については失踪宣告を受け、もう1名についてはその行方を知ることができました(約1年がかりの仕事でした)。
いよいよこちらから遺産分割協議案に合意してもらえるよう説得する作業が残されました。最後には遺産分割協議書への書名と実印の押印、印鑑証明書の添付までもお願いしなければなりません。

しかし、これで業務完了と行かなくなりました。
実は僕の仕事ぶりを評価してくれたのか、僕を信用して日本の遺産の名義変更の作業についても依頼者から仰せつかりました。
とても光栄でありがたい話。
ただ遺産の中に株式が含まれていて、その手続きの煩雑さを知る僕は少し後ずさり(と言っても優秀な事務員に指示することで僕の仕事は終わるのですが、、、かたじけない)。

その後、韓国人女性弁護士のフォローもあって何とか韓国の相続人が存命の間に遺産分割協議書(日韓両言語で作ったもの)への署名・押印をいただき、もちろん失踪宣告した弟の戸籍(家族関係登録簿)整理も済ませ、韓国書類の訳文も整えて、さらには韓国在住の相続人らから『日本での税務申告の委任と相続税の支払い』についてまでも合意を取り付けて、一連の僕の業務は終了したのでした。

 

これまで5回に渡って『日韓両国をまたいだ相続事案』についての事例を紹介しましたが、このようなケースは稀なものではなく、毎年2~3件は僕の下に舞い込んできます。短時間で解決するには専門的知識と経験の集積、法務分野に長けた専門家とのネットワークが重要であると考えますが、いかがでしょうか?
【完】

韓国にいる(と思われる)相続人探し。1年がかりで取り組んだ日本人相続人からの依頼の解決事例。~その4~

僕の知っている韓国の女性弁護士は東大留学経験もある日本語ペラペラの秀才。
早速彼女に現状報告と解決までの協働を持ちかけたところ快くOKしてくれました。
彼女は日本の案件も多くこなしていて、今回のケースについても即、解決策を示してくれました。
それによると、
『朝鮮戦争から帰っていない弟』については失踪宣告を、一方、単に『行方知れずの弟』については別の方法を提案されました。
ちなみにこの二人、先にも言いましたが韓国戸籍(家族関係登録簿)では存命となっています。
日本でしたら戸籍に紐づいている附票により現住所を把握、そこからは実際に行動して居場所を探すことができます。弁護士など専門家士業には職務上、戸籍謄本や住民票を職権で入手することが認められていますから比較的簡易にたどり着くことができます。
一方韓国には職務上請求なる権限が認められていません。
偶然にも僕が提案した方法と弁護士が考えた方法が一致したので、依頼者へ「韓国の弁護士への依頼が必須である」旨伝えその了承を得て、相続人5人の安否確認と居場所の捜索は韓国人女性弁護士へ委ねることに。
(最終的に僕の数倍の報酬を持っていくことになりますが、、、致し方ありませんでした。)
【次回へ続く】

韓国にいる(と思われる)相続人探し。1年がかりで取り組んだ日本人相続人からの依頼の解決事例。~その3~

夫を亡くした日本人女性からの依頼を受けて、夫の財産を相続する人間が<書類上>6人いることまで判明しました。

その内訳は、
[日本居住者]
 妻
[韓国居住者(推定)]
 弟3人、妹2人

しかし、依然として韓国に住んでいると思われる5人の行方は掴めません。
そこで夫が受け取った手紙にある電話番号(当時の自宅や職場)へしらみつぶしに電話を掛けました。
が、繋がらなかったり別人が受けたりと誰にもアクセスできません。
次に行ったのは当時の住所へ直接アクセスする方法です(これの具体的な方法は言えませんが、、)。
そこでやっと存命の妹にたどり着くことができました。
一気に解決へ向けて道が開けたと思ったのも束の間、この妹曰く「兄弟のうち、兄二人は行方が知れず、一人は朝鮮戦争から帰ってきていません」、、、
一難去ってまた一難。
そこで僕は自分の事務所オンリーでの解決をあきらめ、懇意にしている韓国の女性弁護士に助けを求める判断をくだします。【次回へ続く】

韓国にいる(と思われる)相続人探し。1年がかりで取り組んだ日本人相続人からの依頼の解決事例。~その2~

夫を亡くした日本人女性からの依頼を受けて、まずは帰化前の夫の韓国戸籍(家族関係登録簿)を入手することから始めました。
すると、夫には高齢で存命の兄弟姉妹(要約して兄弟と呼びます)が5人いることが分かりました。
行方の知れないこの兄弟を探し出して、遺産の分け方について了承を得て、遺産分割協議書に署名・捺印をもらうまでが<当面の>僕の仕事となります。
正直、手の施しようもない状況でしたが、妻が保管していた10年以上前に夫に届いた韓国からの手紙を頼りに捜索を始めました。早くしないと兄弟のうち90歳を超えている方もいるので時間がありません。
万が一、代襲相続となった場合、相続人が飛躍的に増えてしまうことが僕を焦らせます。
代襲相続とは、本来の相続人(遺産をもらう人)が亡くなってしまい、その遺産をさらに相続するシステムを言います。
相続人数が増えることすなわち、揉める要素が増えることに繋がりますから、、、
スピードとフットワークと語学力と日韓の法知識が試される壮大な依頼をどのように解決したかを、公開できる範囲でアップしてまいりますのでご期待を!【次回へ続く】

韓国にいる(と思われる)相続人探し。1年がかりで取り組んだ日本人相続人からの依頼の解決事例。~その1~

夫を亡くした日本人女性から依頼が来たのは2年前。億を超える資産を残した夫は生前、「日本人になって韓国の連中とは縁が切れたから自分が死んだら財産はすべてお前のものだ」と妻へ話していたとのこと。
しかし、この夫の間違った理解が、残された妻へ大きな負担としてのしかかることになります。
相続のことについて誰にも相談せず亡くなった夫が言っていた『韓国の連中との縁切り』ですが、帰化をして国籍が変わったからと言って縁が切れるものではありません。
よって夫の死亡により日本民法に則り相続が開始され、夫の財産は日本にいる『妻』と韓国に住むと思われる『兄弟姉妹』で相続することに。
実は夫は帰化することにより自ら大きな落とし穴に落ちたも同然の状態になっています。
なぜかと言うと、帰化さえしなければ韓国籍のまま亡くなっていたのであって、その場合韓国民法に則って相続が行われます。日本法と違い韓国法では『妻』がいる場合、『兄弟姉妹』は相続人にはならないからです。説明が遅れましたが、この夫の両親はすでに亡くなっていて子どももいません。
簡単に説明すると、

[日本民法]
第1順位 子ども + 配偶者
第2順位 親 + 配偶者
第3順位 兄弟姉妹 + 配偶者 ⇒今回のケース

[韓国民法]
第1順位 子ども + 配偶者
第2順位 親 + 配偶者
第3順位 兄弟姉妹 OR 配偶者(配偶者がいれば配偶者優先)⇒帰化していなければこちらでした、、

もう一言付け加えておくと、この夫が『遺言書』さえ書いていれば後に生じる「韓国にいるであろう相続人探し」すらも必要が無かったかも知れません。【次回へ続く】

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