国籍・家族関係登録(戸籍)一覧
在日コリアンの離婚事情。
- 2012.08.31(金)
- 国籍・家族関係登録(戸籍) , 日本語
当方、弁護士事務所ではありませんが、度々かかってくる電話で多いのが離婚についての行政相談。(渉外手続に関するもの)
先日もニューカマーの韓国人女性から『離婚の合意をしたのに夫が出て行って帰ってこない、どうしたらいいですか?』との相談を受けた。
離婚について一度でも考えたことがある方はおわかりかと思いますが、離婚には、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3つの方法があります。
このうちのいずれかの方法によらなければ離婚できません。(日本法若しくは韓国法を本国法とする方に限定した話ですのでご了承ください。)
中には、『離婚届に相手の署名さえもらえば離婚できるんだから、誰かに夫の名前を書かせて届け出ればいいんじゃないですか?』との電話をしてくる人も結構います。(もちろんこのような行為は違法であり、後日処罰される可能性もございます。)
また、韓国籍の在日コリアン同士の夫婦の場合、日本の役所への離婚届出のみでは韓国法上、離婚が認められなくなりました。
以前であれば、韓国籍であれ、朝鮮籍であれ、日本籍であれ、日本の役所への離婚届の提出をもって離婚できていました。
しかし、現状では韓国籍同士の夫婦(パスポートをお持ちの方など在外国民登録がお済の方)の場合、2人一緒に在日韓国領事館へ出頭して離婚意思の確認申請をして韓国の家庭法院(裁判所)からその確認を受けた後、やっと離婚ができることになります。
(この間約2~3ヵ月。離婚意思の熟慮期間と言えます。)
長く別居されているご夫婦などはお互い顔も見たくない関係にあることが多いことから、上記手続を踏まなければならない離婚手続は大きな障壁となり得ます。
また、韓国籍同士の夫婦でありながら共に韓国に戸籍(家族関係登録簿)が無くパスポートも持っていない場合には、2人一緒に領事館へ行ったところで婚姻の事実すら登録されていないために離婚の届出はできません。
では、このような夫婦の場合、日本の役所で離婚届を出せるのかというと、、、
結論から言うと日本の役所では受理してくれません。
ただし、夫婦の双方から『申述書』を差し入れることによって窓口で預かるという何とも曖昧な対応をしているようです。(全ての役所で同じ扱とはならないようです。)
ここで注意しなければならないのは、前述した『韓国に戸籍(家族関係登録簿)が無くパスポートも持っていない夫婦』の一方が、日本の役所への離婚届出後に韓国の戸籍(家族関係登録簿)の整理を行うような場合です。
これについては次回のブログで例を挙げて紹介します。
制度に縛られないことも大事。
- 2012.04.17(火)
- 国籍・家族関係登録(戸籍) , 日本語
韓国の戸籍整理(家族関係登録簿整理)のお手伝いをやっていて思うことは、日本に住みながも韓国や朝鮮の国籍を保有している在日コリアンたちは、自分たちの先祖や出自について公証する『国の制度』に対して、皆さん古風な考えをお持ちだということだ。
とても良いことだと感じるが、そもそもこのような家族単位(日本ではいまだに戸主を中心とした家単位)での身分登録制度を採用している国は世界的に見ると小数らしいのだ。
ましてや在日コリアンは日本で生まれて多分そのほとんどが国へ帰ることもないように思う。
それでも本国身分登録にこだわるのは、一つは母国の旅券発給の要件となっているからであり、もう一つは相続などにおいて日本の法務省から本国の家族関係を公証する資料として求められるからであろう。
※参考:相続に関してのエントリー https://www.shon.jp/blog/archives/450
韓国の戸籍整理(家族関係登録簿整理)には尊属からの身分関係をたどって自分自身までを登録させる家族関係登録簿整理手続と、自分より上の尊属に関する身分登録を無視(省略)して自分自身の代から登録を行なう家族関係登録簿創設許可手続の二つの方法があるが、多くの在日コリアンは前者を希望する。
私自身も前者により戸籍整理を済ませたが、今となってはあまりそのようなこだわりは必要なかったのではないかとも思う。(相続を心配する必要もなさそうだし・・・)
極論を言うと、日本の戸籍制度や韓国の家族関係登録制度又は『国籍』しかり、このような身分制度は国家が作ったり変更したり若しくは無くしたりすることが出来るもので、それを使う人間が『制度』自体にあまり振り回される必要は無いのではないでしょうか?
あくまでも個人的な見解ですが、、、
思想良心の自由。
- 2012.02.15(水)
- 国籍・家族関係登録(戸籍) , 日本語
日本国憲法19条は、
『思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。』と定める。
また、大韓民国憲法はより厳格に、
『すべての国民は、私生活の秘密と自由を侵害されない。(第17条)』
『すべての国民は、良心の自由を有する。(第19条)』と定める。
先日、韓国のとある領事館で行われた『国籍回復説明会』(※注1)での領事館側の説明において、以下のような発言があったそうな。
領事館職員:今後あなた方は、大韓民国の国民として生きて行くことになります。朝総連やそれに関係する朝鮮学校、朝鮮商工会、金剛山歌劇団などの団体とお付き合いすることは、くれぐれも控えるように。
私がその場で直接耳にしたわけではありませんが、上記説明会に参加した数名からの情報提供でもあり、このような説明が行われていることは事実でしょう。
フェイスブックにもアップされていましたが、在日コリアン数名が在外国民への韓国選挙権付与の要件となっている『韓国パスポート所持』について韓国内で不服申立を行ったとのことですが、いったい在日同胞は本国で(特に政治家から)どのような存在として理解されているのでしょう。
先日もある韓国人ニューカマーに言われたことは、『在日コリアン達はどのような存在として今後生きて行くのか。私達から見ると中途半端でとても可愛そう。』だと。
その答えは、『日本へ帰化するもよし、朝鮮国籍を維持するもよし、大韓民国国民として朝総連やそれに関係する朝鮮学校、朝鮮商工会、金剛山歌劇団などの団体とお付き合いすることなく生きて行くこともよし。』であるのか。
注1:国籍回復説明会~外国人登録の国籍欄が朝鮮となっている者が国籍を韓国に変更するために要する在外国民登録手続の一環として行われる説明会。外国人登録の住所地を管轄する駐日領事館にて定期開催されている。
☆本ブログの内容は、掲載日時点の情報を元に作成されたものです。
共通番号制度と新在留管理制度。
- 2012.01.30(月)
- 入国管理局情報 , 国籍・家族関係登録(戸籍) , 日本語
昨日の毎日新聞によると、政府が導入を進めている共通番号制度に関する市場調査で約8割の国民が「知らない」と回答したとのこと。
3年後の利用開始を目指している中、あまりにも周知できていいない感がある。
これと似た制度で、隣国韓国では『住民登録』制度が存在し、韓国民は『住民登録カード』を所持している。
韓国の国民は住民登録番号によって個人の特定が容易で、例えば韓国のインターネットサイトでの会員登録には、必ずこの住民登録番号が求められる。
ちなみに在外国民(在日コリアン)にはこの住民登録番号は付与されませんが、旅券番号などにより韓国サイトでの登録は可能です。
本年7月9日に完全施行される『新しい在留制度』同様、日本政府が言う『国民(市民)の利便性向上』はあくまでもプロパガンダで、実際は『国家による国民(市民)の管理強化が目的であるのでは?』とうがった見方をしてしまう。
そうだとしても、参政権を与えられていない私は導入の可否への意思表明すらできないのですが。
日本の善良なる市民の皆様へ、導入によるメリットとデメリットを興味を持ってしっかり見極め自ら意思表示されるようお願いするしかない。
国際結婚の夫婦から生まれた子供について。④
- 2011.12.30(金)
- 国籍・家族関係登録(戸籍) , 日本語
今年最後のブログ更新です。
韓国で認められることとなった『複数国籍制度』について、二重国籍の子供がどのように扱われるのか検討します。
ケースバイケースなので、事例を交えて解説します。
父親:在日3世の韓国籍コリアン(両親ともに韓国人)
母親:日本国籍(両親ともに日本人)
子供:平成18年生まれの長男
出生場所:日本国内
上記の設定では、子供は生まれながらにして[韓国]と[日本]の二重国籍となります。
では、子供は死ぬまで両国の国籍を持ったままでいられるのでしょうか?
【日本側からの検討】
日本の国籍法によると、子供が22歳に達するまでに日本と韓国いずれかの国籍を選択する義務を負います。
もし国籍選択をしなかった場合、日本の法務大臣が国籍を選択するよう催告をし、催告を受けた日から1ヶ月以内に[日本国籍]を選択しないと、自動的に日本国籍を失うこととなります。(ちなみに日本の法務省の話によると、これまで法務大臣が国籍を選択する催告を行った例は無いとのこと。)
また、22歳に達する前に[韓国籍]を選択した場合は、日本の国籍法第11条第2項にあるように、『外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。』ことになります。
これは、その子供が日本の戸籍に載っていようとも、日本国籍が失われることに変わりはありません。
【韓国側からの検討】
先ず、生まれた子が韓国の戸籍(家族関係登録簿)に登載されなくても韓国国籍を取得することに変わりはありません。(※注1)
韓国の法律によっても日本と同様に、子供が22歳に達するまでに韓国と日本のいずれかの国籍を選択する義務を負います。
もし法定された期間内(※注2)に国籍選択をしなかった場合、韓国の法務部長官が国籍を選択するよう催告をし、催告を受けた日から1年を過ぎても国籍選択をしないと韓国国籍を失うこととなります。
ただし、日本と違うのは次の点です。
法定された期間内(※注2)に韓国籍を選択し、且つ、法務部長官に『韓国において日本の国籍を行使しない旨』を誓約した場合には、日本の国籍を喪失しないのです。
簡単に説明すると、日本と違って韓国では、22歳になる前に法務部長官宛に『韓国内において外国の国籍を行使しない旨を誓約する』ことで日本国籍を離脱することなく韓国籍の選択が可能なのです。
いずれしても、日本の法律によって、韓国籍を選択することにより子供の日本国籍は失われることとなりますが。
では、今日のブログのテーマである『複数国籍制度』とは、どんなものなのか。
①優秀外国人材の帰化要件緩和~特別な功労を立てた者及びこれから立てる可能性が認められる者は、人材誘致の観点から国内居住期間に関係なく、韓国内に住所のみ有すれば帰化できる。また、帰化した後の外国国籍放棄義務に関しても特例を認めて複数国籍を許容する。
②外国籍放棄義務制度の変更~韓国国籍取得後に外国国籍を放棄しなければならない期間を1年に延長。また、以下に該当する者については「外国国籍不行使誓約」をもって外国国籍を放棄しなくてもよくなった。
・結婚移民(韓国人との婚姻を維持する状態で帰化した者)
・特別な功労を立てた者及びこれから立てる可能性が認められた者
・国籍回復許可を得た前項に該当する者・未成年時に海外養子縁組され外国国籍を取得し、韓国国籍を回復した者
・65歳以降に永住帰国した在外同胞で、韓国国籍を回復した者
・本人の意思にもかかわらず外国国籍放棄義務を履行し難い者(大統領令による)
③複数国籍者の国籍選択~以前は複数国籍者が韓国の国籍を選択する場合に外国国籍を事前放棄することが必須となっていたが、現在の法律では「外国籍不行使誓約」を行うことで、外国国籍を事前放棄することなく韓国の国籍を選択することが可能となった。ただし、これができるの法律で定める基本選択期間に限る(注2)。以前は複数国籍者が法で定める基本選択期間内に国籍選択をしなかった場合、韓国国籍を自動的に喪失したが、改正法では法務部長官の国籍選択命令を受けて1年以内にそれをしない場合に韓国国籍を喪失することとなった。
(※注1)
2010年5月4日の改正法公布日の前日までは、満22歳になるまで韓国での出生申告をしなかった者は国籍選択を行わなかった者として国籍を自動的に喪失することになっていて、満22歳になった後には戸籍整理(家族関係登録整理)もできませんでした。しかし、2010年5月4日改正法公布日からは、国籍選択不履行者は法務部長官の国籍選択命令を受けた後初めて韓国国籍を喪失することとなったので、前記の場合でも韓国国籍を自動的に失うことは無くなったし、戸籍整理(家族関係登録整理)も可能となりました。
(※注2)
満22歳になる前に複数国籍者となった者は満22歳になる前まで、満20歳になった後に複数国籍者となった者はそのときから2年以内(韓国は兵役の関係で例外あり)
以上。
来年もよろしくお願いします。