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外国人の「在留資格更新」に社会保険未納が影響?―人権と制度のバランスを問う

2025年6月、政府は外国人の中長期在留資格の更新審査において、「社会保険料や医療費の未納・未払い」がある場合には、在留資格の更新を認めないという新たな制度の導入を検討していることが報じられました。

これは、日本に中長期滞在する外国人(就労ビザや家族ビザ、留学生等)に対し、社会保険や国民健康保険の適切な加入と納付を義務づけるという方針の一環です。しかし、その実施に向けては、さまざまな人権上・実務上の課題が浮き彫りになっています。


◆制度改正のポイント

政府の方針によると、外国人が社会保険料を滞納していたり、医療費の未払いがあるような場合、在留資格の「更新」が認められなくなる可能性があります。

これは、納税義務や医療制度の健全性を保つ目的ではありますが、「ルールを守らない外国人を排除する」趣旨が強く打ち出されている点が特徴です。


◆人権の観点からの懸念

外国人にとって、在留資格は生活基盤そのものです。その更新が、必ずしも本人の責に帰せない事情(雇用主による保険未加入、制度の理解不足、言語的障壁など)で左右されるとなれば、人権侵害に近い重大な問題になりかねません。

たとえば、技能実習生の多くは雇用主の指示で動いており、保険手続きも雇用側が管理しているのが実情です。その未納が「本人の責任」とされ、更新不可とされた場合、極めて不公正な扱いとなります。


◆不十分な客観データと「恣意的運用」のリスク

記事でも指摘されているように、現在のところ政府が示す統計は不十分です。たとえば、

  • 外国人による未払い医療費がどれほど全体に占めるのか

  • 社会保険未納の背景にどんな構造的問題があるのか

といった情報が曖昧なまま、政策だけが先行している印象です。こうした状況では、現場の入管担当官の裁量が広がり、恣意的な判断がなされる懸念も否定できません。


◆行政書士としての立場から

私たち行政書士は、制度と現実のはざまで苦しむ外国人と日々向き合っています。確かに、制度の維持や公平性は重要です。しかしそれは、正確なデータと客観的な判断基準があってこそ成り立つべきです。

在留資格の更新要件を厳格にするならば、その前に、

  • 外国人が制度を理解できる環境づくり

  • 雇用主の責任明確化と監督強化

  • 弁明・説明の機会の確保

など、慎重で丁寧な制度設計が不可欠です。


◆結びに

「ルールを守らない者を排除する」のではなく、「守れるように支援する」。
これは、共生社会の第一歩です。僕も、在留外国人に日々接している行政書士として、その理念を胸に、外国人の権利と生活の安定を守る伴走者でありたいと思います。

 

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